第5回『このラノ』大賞 3次選考結果

2次選考を通過した22作品の中から3次選考を通過した2作品が決定しました。
本年度は2作品が3次選考を通過しました。
(掲載は五十音順)



『勇者は口数がそんなに多くない傾向にあるのか』 加藤雅利 →2次選考評価コメント


『ロリコンするウレタン・ボア生地製熊のぬいぐるみ』 はまだ語録 →2次選考評価コメント


3次選考総評

 本年度もたくさんのご応募ありがとうございました。2009年よりスタートした『このライトノベルがすごい!』大賞は、おかげさまで第5回を迎えることが出来ました。
 本年度は受賞レベルをクリアする作品が少なく、選考は非常に難航しました。結果として、例年通りの数の作品を最終選考に進めることは難しいと判断することになりましたが、中でも卓越した評価を獲得した2作品が最終選考に進む運びとなりました。
 加藤雅利さんの『勇者は口数がそんなに多くない傾向にあるのか』は日常にRPG的な設定を持ち込み、独特な空気感を演出したコメディです。情景を浮かび上がらせる文章の力が高く評価されました。各キャラクターはユニークで、とても魅力的に描かれています。
 はまだ語録さんの『ロリコンするウレタン・ボア生地製熊のぬいぐるみ』は史上最強の天才魔術師が、熊のぬいぐるみの姿で生意気な姉妹の面倒を見るという設定が光った作品でした。先の展開を期待させるだけの力があり、魔力の有無による差別社会など設定が秀逸で、この世界の魅力を存分に見せていました。
 次に今回は残念ながら3次通過とはなりませんでしたが、通過までもう一歩だった作品を挙げたいと思います。
 秋山楓さんの『六花廷へようこそ』はお嬢様学校に法廷劇を持ち込むというアイディアが秀逸な作品でした。掴み以降の展開に、もう一捻り加えて、主人公を魅力的に仕上げられると、より惹き込まれる作品になると思います。
 中垣秀隆さんの『世界は『真実』で満ちている』はしっかりした世界を構築したファンタジー作品で、読者の気持ちを揺さぶるだけの筆力を持った作品でした。新鮮な謎、オリジナルな世界設定を構築するだけの力はありますので、キャラクターと世界設定、ストーリーがより有機的に組み上げられると、さらに読者の心を掴む作品を作れると思います。
 ミヤモトソラトさんの『RPG殺人事件』はRPGのお約束を用いて密室ミステリーを成立させた作品です。中盤以降の展開の起伏や緩急を意識すると、一層、読者を楽しませる作品になると思います。
 今回の選考では、小説としての完成度は高いものの、現在のライトノベルの潮流に照らし合わせて考えたときに、選外とせざるを得ない作品が多くありました。書きたい作品を自由に書くことも重要ですが、エンターテインメントとして、読者を楽しませるという視点、魅力を意識することも、同様に重要なことだと思います。
 残念な結果となった方も、評価シートなどをご参考に、自身の作品を読み直し、是非また新たな作品を作り上げてください。書き続ける限り、チャンスはいつまでも残っています!