第5回『このラノ』大賞 1次選考通過作品詳細

『六花廷へようこそ』 秋山楓

 十年前まで超お嬢様学校として名を馳せていた六花総合学園。共学校となった現在も、その実権は今なおお嬢様たちが握っていた。彼女たちはささいなことで男子にケチをつけ、「六花廷」なる裁判の場へ引きずり出す。主人公の野村は、そんな哀れな男子を救う弁護士として日々お嬢様と舌戦を繰り広げていたが、彼自身が告発されたことをきっかけに、全てが思いがけないほうへ転がり始める。

評価コメント

 ゲームの題材としては定着してきたジャンルですが、小説作品の題材として裁判ものを選び、「お嬢様vs庶民男子」というわかりやすい闘争の図式を敷いて、かつラブまで含むコメディに仕上げてみせた、そのネタ力と構成力に感動しました! そして、苦戦苦闘を繰り返し、それでも決して蟷螂の斧を振りかざすことを止めない不屈っぷり。さらには、そんなヒーローを次々逆境に叩き込んでしまう作者のエンターテインメント性は、読んでいて本当に気持ち良かったです。読者を楽しませることを強く意識し、しかも物語を成立させた上で実行できる作家性に、強い光を感じました。
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