第5回『このラノ』大賞 1次選考通過作品詳細

『灰色の未来はその少女たちの炎に照らし出される。』 川田能生紀

 本来は災害であるはずの幽霊をエネルギーとして利用する近未来・臨代。特殊法人・日本霊力機関に採用された作並庵里は、対幽霊用として造られた三体の霊人形の面倒を見るよう命じられる。性的な行為に興味を持つ土湯を筆頭に、個性的な霊人形に振り回される日々を送る庵里であったが、あるテロ事件をきっかけに、彼女らにとある機能が備わっていないことを知り、霊人形を巡る闇に飲まれていく。

評価コメント

 キャラクターの立て方がうまい作品でした。三体の霊人形それぞれにハッキリとわかる個性があり、とりわけ積極的に庵里に迫る土湯がとても可愛らしかったです。出会い頭に童貞かどうか尋ねるヒロイン、良いと思います。もちろん、それが単なる艶笑のための描写ではないのも好印象。彼女がひたすら迫るような台詞を繰り出すにはちゃんとした理由があり、それが物語の鍵となっているわけですね。この作品が土湯という霊人形の物語であり、霊人形という「種族」の物語でもあるということを出会いの時点で示しつつ、彼女らを巡る国際的な陰謀と政治を描いていく、作者の意図がはっきり伝わってきました。
一覧に戻る