第5回『このラノ』大賞 1次選考通過作品詳細

『有毒彼女』 酒井梓都

 竜神族のキリークは双子の弟タラークと貧民街で暮らしていた。タラークはいろんなものを取り除く「除竜」であり、その能力が原因で誘拐されそうになる。しかし、様々な間違いが重なり、誘拐されたのはキリークだった。

評価コメント

 まず、様々な竜たちが生活を営む、竜神国という世界に興味を引かれました。痛みなどを取り除く「除竜」や記憶を消す「狂竜」など、次々と特殊な竜が現れファンタジーの醍醐味が味わえます。主人公のキリークは、偶然が重なり弟のタラークと間違えられ、記憶を消され無理矢理に特殊部隊「血竜」に入隊。そこで出会った息も汗も涙もすべて毒という「毒竜」の少女ヴィーズリに一目惚れしてしまう。一方で弟のタラークは失踪した兄を探し、とまるでシェイクスピアのような愛憎と運命の悪戯が重なり合う複雑なストーリーが展開されています。異世界ならではの恋愛模様に、不思議な読後感が味わえる作品でした。
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