第5回『このラノ』大賞 1次選考通過作品詳細

『東亰府洋風茶店 いろは亭異聞』 蒼海堂

 時は明治九年。偉人の富豪の娘さやは、帰国直後に乗っていた汽車を天人党に乗っ取られてしまうが、乗り合わせていた最年少巡査の鉄之進と協力して脱出に成功する。その際に鉄之進はさやから『志乃』と呼ばれ、自分とさやの容姿がうり二つだと知って衝撃を受ける。さやは鉄之進が記憶をなくした過去に関わりがあったらしい……。

評価コメント

 明治という発展期にある前向きなうさんくささをうまく舞台に活かして、冒険活劇じみた世界観を描き出しています。探偵役をあえてさや一人に一任せず、鉄之進に最初に推理させることで、鉄之進にも活躍の機会を与え、同時に徐々に成長して行く様子がわかり、うまいやり方になっています。他のキャラもきちんと立っていますが、特にさやのキャラクターは絶妙の出来。『志乃』に対する信頼の深さ、それとなくリードする勝気な態度など読者に訴えかける魅力に溢れています。
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