第5回『このラノ』大賞 1次選考通過作品詳細

『いくつか足りない次元の話』 藤一左

 三次元に背を向けて、(隠れ)ヲタライフを満喫している高校生のツキヒとトウギ。彼らのヲタ仲間であると思っていた美少女のポーターは、じつは天使見習いだった! それを見抜いた二人に対して、彼女が依頼したこととは…。

評価コメント

 ガチヲタトークから始まって、予想外の方向に転がるストーリー展開にグイグイ引き込まれました。ヲタクをはじめ、ライトノベルの読者層である思春期の抱える葛藤や悩み、倦怠、諦念や不安などが説教臭くなく描かれており、同世代からの共感を呼べるでしょう。かといって暗い作風ではなく、ツキヒとトウギ、そしてポーターの掛け合いは軽妙で笑わせてくれます。しかもしっかり伏線を用意していて、読者が疑問に感じるところをうまく回収してくれるのも怠りません。また、主人公が男二人だというのも新しい試み。全体的に作者の感性の鋭さと、それを伝える技術の巧みさを確信できます。続きが読みたくなる作品でした。
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