第5回『このラノ』大賞 1次選考通過作品詳細

『憑き女の結月と申します』 冬原幸輔

 三笠原には『憑き女』と呼ばれる妖怪の伝承がある。女性にとり憑き、その人間の代わりに人生を送るという。二神慧は高校入学と同時に、この憑き女について調べるという名目で、オカルト研究部を創ろうと考えていた。自分の前から突然いなくなった「あの人」の手がかりを掴むために。

評価コメント

 自殺しようとする女子生徒、そこに現れ、取引を持ちかける憑き女。「あなたはまだ十五歳。死んでしまうのには、少し早すぎるというか――もったいないとは思いませんか?」これから何か大変なことが起きそうだという予感、自殺の理由が描かれないことから漂うミステリアスな雰囲気、さりげなく張られた伏線。スマートにまとめられた、いい掴みです。これだけ書ければ後はもう最後まで突っ走るだけですが、本編に登場する三人の女の子と憑き女の関係を予想しながら読み進めていると思わぬタイミングで真実が明らかに、というのも予想外でした。捻りの利いた展開、良いものですね。
一覧に戻る