第3回『このラノ』大賞 受賞作品詳細

第3回『このラノ』大賞 / 優秀賞

『オレを二つ名(そのな)で呼ばないで!』 逢上央士(あいうえ・おうじ)

(応募時筆名:逢上翁児)
作者プロフィール
東京生まれ色々育ち。幼少期に3つの小学校を渡り歩いた経験は、立派な芸の肥やしになっていると信じたい。今回「二足のわらじ」状態にも関わらず、衝動と情動のままに作家を志し作品を投稿。その熱い思いがどう受け止められたのか、現在に至る。幸運にも得た「三足め」をどう履きこなそうか、いまも模索中。

あらすじ

 異能力の素養のある子供達が集められた学園の生徒、御手洗新(みたらい・あらた)は、自分の〈二つ名〉(エリアス)決定について悩んでいた。今日、システムに登録すれば、あこがれの〈二つ名〉が手に入るのだ。ギリギリまでカッコイイ名前を考えて申請場所に足を運んだアラタだったが、既に自分の〈二つ名〉は申請されていた!?
 新たな二つ名獲得を目指し、アラタのバトル大会〈黄金杯〉に向けた戦いがいま始まる。第3回『このライトノベルがすごい!』大賞優秀賞のアクション・コメディ!

受賞コメント

 はじめまして、逢上央士です。この度はワタクシの脳内を赤裸々に表した当作品を選んでいただき驚天動地で五体投地の心持ちです。受賞のご連絡をいただいた瞬間から現在に至るまで、未だ覚めぬ夢の中にいるのではないかと半ば現実逃避するも、差し迫る改稿〆切は待ってくれません。現在も勝手にだだ漏れ続ける妄想をなんとかお届けできる形に整えるべく、担当様のご指導のもと必死にキーボードを走らせております。幸いにも、当作品の登場人物達はワタクシの誇大妄想を余すこと無く受け止めることができる、パワーに満ちあふれたキャラクターばかりです。彼らがどういった姿で世に飛び出していくのか、いまから楽しみでなりません。
「キャラクターと共に筆も踊る」そんな作家でありたいワタクシ逢上ですが、皆様方の心をも躍らせる良質の物語(ステージ)たるエンターテインメントをご提供できるよう、粉骨砕身励みたいと思います。なにとぞよろしく、末永く。

最終選考委員選評

勝木弘喜(ライトノベル・フェスティバル初代実行委員長)
極楽トンボ(評論家、HP「まいじゃー推進委員会!」管理人)
タニグチリウイチ(書評家)
工藤淳(「まんが王八王子店」小説担当)
川崎拓己(「コミックとらのあな千葉店」店長)
特別選考委員栗山千明さん選評はこちら


勝木弘喜(ライトノベル・フェスティバル初代実行委員長)

 一読した感想は、ザ・ライトノベル!です。二つ名システムという特殊能力を使ったバトル設定、主人公御手洗の二つ名能力に対する笑いと工夫、御手洗とあうんの幼馴染みや同門の武術を使うライバルなど多彩なヒロインたち、卑劣な手段で御手洗を貶める悪役。ライトノベルの王道が見事に盛り込まれています。使い方次第で幅広く応用できる二つ名システムは、バトルの勝敗も予想不能。次々と開花していく主人公の能力と、熱いバトル展開は疾走感バツグン。出版前から続巻が待ち遠しい!

極楽トンボ(評論家、HP「まいじゃー推進委員会!」管理人)

 王道中の王道である学園+能力バトルの本作だが、能力によって二つ名が決まるのではなく、二つ名から能力が決まるという逆転の発想はおもしろい。しかも肝心の二つ名が<噛ませ犬>とは! 序章の掴みは非常にいい。また、噛ませ犬という自分以外の対象の能力を強化する力を使って、個人戦を戦うというのが、智恵の勝負になっていてこれも捻りがきいている。変な冒険はしてないので、その分安心して読める内容になっている。

タニグチリウイチ(書評家)

 異能の力によくつけられるネーミングを逆手にとって、格好良さと貧相さのギャップを浮かび上がらせ、楽しませるという着想がとにかく愉快。そうした力が、ただ貧弱なだけでなく、使い方によっては有効になる展開を見せることも、逆転への興味を与えて読ませる。佐藤了の『世界の危機はめくるめく!』や初美陽一『ライジン×ライジン』などと同系列の連携の妙味と逆転の面白さ。どうしてそんな力が少年少女に宿るのか、異能の力を持った少年少女を抱えた世界はどんな風になっているのか、なんて想像も広がる、学園異能バトル&コメディーの登場だ。

工藤淳(「まんが王八王子店」小説担当)

 いまどきのライトノベルによくある学園異能バトルものだが、そういった作品世界に登場する『二つ名』を自分で勝手に決めてしまえるというのがこの作品の面白いところ。ライトノベルによくある設定を逆手に取った設定です。さらにおもしろい要素が『二つ名』に付く読み次第で自分の望んだ通りの能力になるかはわからないというところ。主人公の隠し能力への布石なども凝っていて、異能バトルに関する設定関連ではこの作品のポイントは高いのですが、キャラクターは友人、幼なじみなど定番で安定。その分キャラが弱い感じがしました。

川崎拓己(「コミックとらのあな千葉店」店長)

 キーワードは『学園』『特殊能力』『バトル』……そして幼馴染! これぞ「ザ・王道学園ファンタジー」と言える作品だと思います。非常に読みやすく最後までスラスラと読める作品でした。二つ名システムも面白く、使用方法次第ではどんな特殊能力でも非常に効果的なんだなと示せていると思いますので、次巻以降、どのような特殊能力が出てくるのが楽しみです。