第3回『このラノ』大賞 受賞作品詳細

第3回『このラノ』大賞 / 優秀賞

『剣澄む~TSURUGISM~』 ますくど

作者プロフィール
神奈川出身、二十一歳。この前、財布をなくして焦る。ついさっき、大学で携帯電話をなくして焦る。単位がとれなさそうで焦る。あまりにも書くことがないので焦る。だけど財布は見つかったし、携帯も見つかったし、文字は埋まったし、これはこれでいいと思う。単位は未定。

あらすじ

 西暦2020年、日本には特別に帯刀を許された「御三家」と呼ばれる組織があり、神秘の武具を守ることを使命としていた。ところがあるとき、「刀狩り」と呼ばれる謎の剣士が現れ、御三家の剣士の刀を次々と奪っていくという事件が発生する。父もまた「刀狩り」に襲われたと知らせを受けた上泉綱義は、実家に戻り、蔵に捕えたという「刀狩り」と対面する。それは縄でぐるぐる巻きに縛られた、この世のものとは思えないほど美しい、自らを妖刀村正と名乗る少女だった――。

受賞コメント

 はじめまして、ますくどと申します。素晴らしい賞を頂いて感激の極みです。文化人類学も、相対性理論も、簿記も、金融論も、基礎統計学も、マクロ経済学もミクロ経済学も、落としていった単位たちはみな、これに喜んでいることでしょう。できれば今回の知らせでもってこれらの単位が復活するのであればこれほどの喜びはないのですが、我が大学にはそのようなシステムが完備されていないようです。いち早くの導入を求めております。これからはもう少し単位をとりつつ、筆もとりつつ、時々単位は落としつつ、原稿は落とさないようにしつつ、誠心誠意頑張っていこうと思います。ふつつかな作品ではありますが、どうぞよろしくお願いいたします。また、制作に協力してくださった多数の方、私に単位を下さった教授、これから下さるだろう教授、下さるに違いないだろう教授に、深くお礼を申し上げます。どうぞよろしくお願い致します。

最終選考委員選評

勝木弘喜(ライトノベル・フェスティバル初代実行委員長)
極楽トンボ(評論家、HP「まいじゃー推進委員会!」管理人)
タニグチリウイチ(書評家)
工藤淳(「まんが王八王子店」小説担当)
川崎拓己(「コミックとらのあな千葉店」店長)
特別選考委員栗山千明さん選評はこちら


勝木弘喜(ライトノベル・フェスティバル初代実行委員長)

 ライトノベルでサムライバトル、ガチです。通常、ソードバトルといえば、特殊能力やギミック、使い魔などがつきものです。しかし、本作品のバトルシーンは、シンプルな日本刀を使った生身のチャンバラ。少女や動物の姿をとる名刀や、ちょっとおかしいだろうと思えるほどかわいい弟など、ライトノベルとしての楽しみがありながら、中心軸にどっかと座るは磨きぬかれた技と技、心と心がぶつかる真剣勝負。バトルを盛り上げる刀と、刀に生きる人々のドラマをしっかり楽しみ、武士の戦いをじっくり堪能していただきたい。

極楽トンボ(評論家、HP「まいじゃー推進委員会!」管理人)

 なんといってもこの作品最大の魅力は剣劇バトル、これに尽きる! 人間やめました系の超人バトルの域に達しているのだが、描写が上手いのであくまでも能力バトルではなく剣劇の域にとどまっているあたりに強い拘りを感じる。また、バトルの中で刀に魅入られた刀狂いたちの生き様がこちらに伝わってくる。一見理性を保っているように見えてネジの飛んだ人間たちの戦いは鬼気迫るものがある。
あと、これは言っておかねばならない。弟である信景のかわいさがやばい。女性読者はきっとイチコロだ。村正と弟による綱義の取り合いは、この部分についてはもはや立派なラブコメ。すばらしい。

タニグチリウイチ(書評家)

 剣術に長けた者たちが、全身全霊を込めて剣を振るい、ぶつかり合う剣戟のシーンがとにかくスリリング。丹念な所作の描写も含めて剣術への深い愛があって、そうした分野への興味を持たせてくれる作品だ。おまけに、主人公の上泉綱義をとてつもなく慕う弟の信景が、どこまでもいたいけで可愛らしく、ギュッと抱きしめてあげたくなる。信景の前では本来のヒロインで、剣でありながら少女でもある村正の可愛らしさも霞むくらいだけれど、本当の自分を打ち明けたくて、それができないでいる村正のいじらしさもそれはそれで。バトルの迫力とキャラクターの個性を、合わせ楽しめる作品だ。

工藤淳(「まんが王八王子店」小説担当)

 近未来の日本で刀が戦闘の主体の世界観。ここだけならば今時のラノベ風だが、とにかくこの作品は刀での戦闘シーンの力の入れようがすごい。その描写はライトノベルというより剣豪小説。技の流れを感じさせ、映像化したらかっこ良いビジュアルで動くに違いないとを想像させてくれました。世界観・設定全体に対する説明の足りなさを感じたが、この迫力のある戦闘シーンひとつでもとびぬけた魅力を持った作品でした。この戦闘シーンの描写力に、世界観・設定を解説する力が加われば、この作者はかなりのものになると思います。

川崎拓己(「コミックとらのあな千葉店」店長)

 ついにキマした! 個人的に大好きな剣豪小説。著名な日本刀を用いた剣豪同士のバトルは躍動感があり、非常に読み応えがありました。また、登場するキャラクターの個性もツボを押さえているのが憎い! 美少女と見間違う程の容姿を持つ弟とロリっ娘の姿をとる日本刀、その両者に挟まれる主人公……羨ま、ではなく素晴らしい!! どのような展開になるのか、今から続きが非常に気になっています。