第4回『このラノ』大賞 1次選考通過作品詳細

『あの世界』 杉原由紀

 中学三年生の少年・梓実は、アニメーターになるため《三鷹スタジオ》の扉を叩く。道中で出会った、失業中の動画マン・烏梅と共に、面接を受けることになるが、オフィス内では制作中のアニメの原本が盗まれるという事件が発生しており……。

評価コメント

 職業ものと日常ミステリーを融合させたお話。アニメ業界を取り巻く環境と、現場で働く人々の様子がもの凄いリアリティで描かれています。業界用語もふんだんに使われ、なおかつ非常に詳しく、アニメ制作に興味がある人は、その部分だけでも楽しめてしまうレベル。キャラクターは、わかりやすい記号でこそ示されていないものの、どれも人間味に溢れ、魅力的かつ特徴的。特に、超一流と設定した人物に、具体的な技術を文中で示して「スゴみ」を付与できた点は素晴らしい。業界の中身を描くだけでなく、その中にミステリー要素を組み込むことにより、より見所の多い作品に仕上がっています。謎解きの部分でも、業界ならではの要素や視点をうまく絡めており、完成度は非常に高い。
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