第4回『このラノ』大賞 1次選考通過作品詳細

『時つ風の颯子』 ヤマダマサキ

 南方の島国、夏枝国の片隅で目覚めた少女には、一切の記憶がなかった。やがて、颯子と名付けられた彼女は自らの記憶を取り戻すために王府へと旅に出る。しかし、そんな彼女の周りには陰謀が渦巻き始め……。

評価コメント

 異世界ファンタジー小説の基本は、まずは言葉で異世界らしさをきっちりと出してやること。その点、この作品は衣類の呼び名、地名や人名の付け方に至るまで、実によく行き届いた異世界らしさがあります。異世界の社会制度のディティールも非常に良い。西洋風でもアラビア風でも純然たる中華風でもない、南国風の舞台設定には、独自性があります。キャラクターに目を移せば、祈ぎ霊師の鴉眉子と木霊翁のアヌハンの造形が面白かったです。老人が魅力的に描けるというのは、ライトノベルでは少し珍しい武器になります。
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