第4回『このラノ』大賞 2次選考通過作品詳細

『お姫様の奴隷』 シライ邦也


評価コメント(1)

 未だ異教徒を蛮族と考え、奴隷制度の残る17世紀の国際情勢が安定しないチュニスを舞台に、賢くもどこか無謀なところのある悲劇の姫と、敵国に1人で流れ着いた正義感の強い戦士の出会いというシチュエーションが素晴らしい。リアリティがありながら、異世界ファンタジーのような雰囲気に浸れます。そして、異国の少女を具現化したようなミステリアスなヒロイン・ヒュリヤの博識ぶり、芯の強さ、見え隠れする陰が読者を引きつけてやみません。主人公レオの気持ちになって、振り回されました。

評価コメント(2)

 17世紀における世界史を下敷きとして当時の国際情勢や風俗を盛り込みつつ、物語そのものは奔放な皇女と、それに振り回される騎士という親しみやすい話にすることに成功しています。この作品によって、世界史に興味を持ってもらえるという副次効果も期待できそう。本文も読んでいて一切不安を感じない文章力があります。 構成もうまく、特にレオが何度も奴隷として売られるパターンをあえて繰り返し、その度に結果を始めとして変化させるという試みは良いアイディア。さらに、この手の騎士道物語の常である、姫を護る無敵の騎士様というお約束を守らず、腕っ節には期待できないし、異常に頭が冴えるわけでもなく、もっぱら真心が武器という形にしたのも面白いです。


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