第3回『このラノ』大賞 1次選考通過作品詳細

『メメントモリ』 七天

 西暦二〇四〇年代、地球は異星人連合と名乗る地球外生命体に侵略を受けていた。人類は人型機動兵器WASを主力に戦争を続ける。カイル・オブライエンはWASドライバーとして『ストレイ・キャッツ』第二小隊に配属され、異星人との戦いに身を投じる。

評価コメント

 歩行兵装システムや軍隊内部のディティールが細かく記述されており、軍隊物を書く確かな実力が備わっています。ダーツバーでの名も知らぬ兵士との交流、兄と同じく軍隊に入りたいと願う弟とそれを止めようとする家族、といった本筋からやや離れた場面の描写も印象的で手抜かりはありません。そして、戦争を淡々と語るカイルの異常性がゆっくり肥大していく様が丁寧に書き込まれているのは何よりの美点。気付いたらおぼろになっていた友人の顔、戦闘に感じる悦び、そうしたものが静かな文体の中で次第に立ちあがり、時に言葉を変えながら繰り返される表現が詩情を添えています。
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