第3回『このラノ』大賞 1次選考通過作品詳細

『かんのー小説家がえろげー声優に出会った時』 柊雅也

 官野勇作は小説家志望の高校一年生。何度投稿しても賞をとることができずにいた。そこで彼は設立まもない出版社、「株式会社ドリームノベルズ」に持ち込みを敢行する。が、そこは官能小説専門の出版社だったのだ! それを知らずに乗り込んでしまったことに激しく動揺する勇作だったが、文章力を買われ、社員としてスカウトされる。加えてなんと、官能小説家としてデビューすることになる。思わぬ形でプロの世界に踏み込んだ彼は、さまざまな人との出逢い、経験を重ね、ひとつの決意を固めていく。

評価コメント

 主人公の初期設定が良い意味で「普通」。読む側に強く感情移入させる力があります。さらにその心情描写と感情の動きが細かく、しかもうるさくならない自然さで描かれており、最後まで違和感なく主人公の生き様を読み込むことができました。この「一人称とはかくあるべし」と感じさせる筆力はすばらしい。また、この筆力は他のキャラクター描写でも発揮されており、主人公の目を通して見えるヒロインたちが非常にいきいきと言葉を発し、行動しています。命あるキャラクターは、その言動すべてで物語を盛り上げるということをあらためて確かめさせてもらいました。
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