第3回『このラノ』大賞 2次選考通過作品詳細

『もうあの六月には戻れない』 作良金具


評価コメント(1)

 心を縮こまらせてしまっている人たちに読んでほしい作品。平凡な日常と特異な事件とのバランスがうまく、特に清文が友達を作っていく日常描写が自然に描かれていて巧み。クライマックスでの真相解明は急転直下ですが、その時点からそれまでの描写を振り返ってみれば、清文や犯人の心情が実にせつなく描けています。そして、最終ページで犯人にもたらされる救いと試練には、目頭が熱くなりました。

評価コメント(2)

 ストーリー展開にきちんとした構想があり、読み終わったときにしっかりとした読後感がありました。少しずつ明かされていく謎に引き込まれ、ぐんぐんと読み進められる展開にまず目を引かれます。最後まで読み終わったあとにもう一度プロローグを読み返してみようと思わせるだけの深さがあり、読み返すとそこで表明されたものがすとんと腑に落ちる。エピローグにも読者にその後を想像させる余地を残している点も良いです。作者のなかでそれだけきちんと物語世界に対するテーマがあると感じられ、またそのテーマを自分なりに表現できているのも評価できます。


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