第1回『このラノ』大賞 1次選考通過作品詳細

『私は死神を好きになる』 TACK

 しがない物書き・凪ミコトがアパートへ帰ってくると、扉の前に女の子・イザナミが待っていた。彼女はミコトに「死神の存在を知っているか?」と訊き、なぜか彼の命をつけ狙う。しかも、それなのに彼の元へ来た理由は「愛が欲しい」からだと言うのだ。わけのわからないミコトは生き延びるための努力を開始。不可思議な生活の中でイザナミの言葉に隠された真実、そして自分の正体を知る。


評価コメント

 最初に目を惹かれたのは、主人公を「3日で殺す」ともじもじ言い張るヒロイン・イザナミのかわいらしさ。しかし読み進めていくうち、ひとりに絞り込んだヒロインが主人公と心を通わせていくドラマを描きぬき、さらに序盤から張り続けた伏線によって一気に物語へ惹き込む「うまさ」にうならされることに。死神というオーソドックスなネタを、キャラと物語の両面から魅力的に見せてしまう実力はすばらしいのひと言。また、独特のリズムを刻む柔らかい文章も、物語が到達する残酷なカタルシスをより盛り上げる効果を発揮し、好印象を受けました。

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