第1回『このラノ』大賞 1次選考通過作品詳細

『やさしいNの減らし方』 奥谷有

 瀬村文人はとある理由から女性とのコミュニケーションに恐怖心を抱いていたが、高校の入り口で見知らぬ女子に怒られているとき、とつぜん彼女からキスをされる。この事件がきっかけで彼らは文芸部員として親しくなるのだが、瀬村には秘密にしていることがあった。


評価コメント

 主人公の「能力」の設定により、「コミュニケーション一般にともなう根源的な不安」というものがうまくドラマに変換されています。物語後半の展開がもつ絶望の深さも際立っており、一読して忘れがたい印象を残しました。淡々としていますがどこか陰のある文体も、読みやすいだけでなく、主人公の性質にうまくマッチしていました。チャット仲間「レジ」の意外な正体など、細かい複線の回収も巧みで、物語から目を離せませんでした。

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