第1回『このラノ』大賞 1次選考通過作品詳細

『残照のエスカ』 作地泉美

 霊能者の家系に生まれた陽久は、幼なじみの歩友香たちとの中学校生活を楽しみながら、夜にはその能力で霊たちを「向こう側」に送る日々を過ごしている。ある日、母親と歩友香が事故に巻き込まれ、見舞いに行った陽久は、病院の屋上で死んだ姉の霊と出会う。


評価コメント

 幽霊とは過去の人間が現在に顔を出す現象であるように、この作品の主題も過去と現在との交錯にあります。この作品のトリッキーな叙述は、語り手・陽久の出生にまつわる真実が明かされる過程のおもしろさを演出しています。と同時に、その愛の思いがけない深さも。この真実は、陽久の幼なじみにも知られ、現在の彼らの友情も試されることになります。このように本作品は、いくつもの物語を重ね合わせることで人間同士の絆を描き出しています。

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