第1回『このラノ』大賞 1次選考通過作品詳細

『偽者な聖人様はケシスレルヴァディシで』 福森由仁

 十字軍とルーム・セルジューク朝の間で板挟みとなったカッパドキア。その岩窟修道院に身を寄せる修道女アンナは、シメオンという名の一風変わった男の世話をして暮らしていた。ある日、そんな彼女のもとに、本物の聖人シメオンを探しに来たという男が現れて……。


評価コメント

 まず、話の作り方が上手です。主人公であるアンナたちが対峙するさまざまな謎の一つ一つが「いかにもカッパドキアっぽい」だけでなく、伏線としてもうまく機能しています。アンナのキャラ造形も緻密な計算の上に成り立ち、非常に巧妙です。薄皮を一枚一枚剥ぐように真実を明らかにしていく手法も好印象。作者の技巧が光る作品です。

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