第1回『このラノ』大賞 3次選考通過作品詳細

3次選考を通過したのは以下の5作品です。
(掲載は順不同)



『ファンダ・メンダ・マウス』大間九郎 →2次選考評価コメント


『伝説兄妹』 おかもと(仮) →2次選考評価コメント


『コトモノオト』 泉貴大 →2次選考評価コメント


『僕たちは、監視されている』 里野修平 →2次選考評価コメント


『暴走少女と妄想少年』 木野裕喜 →2次選考評価コメント


3次選考総評

 応募総数752作品の中から1次選考、2次選考を通過した23作品ということもあり、非常にレベルの高い作品ばかりでした。選考者にとってはうれしくも、非常に悩ましい選考となりました。そうした中で、最終的に3次選考を通過した5作品に共通していたのは、他にはない、オンリーワンの魅力であったように思います。
 大間九郎さんの『ファンダ・メンダ・マウス』は、独特な文体で読ませる作品で、その文体が、キャラクターや世界観をより豊かなものにしていました。ある種の中毒的な魅力を持った作品です。
 おかもと(仮)さんの『伝説兄妹』は、キャラクター造形が光る作品で、ダメ主人公・柏木を軽いタッチで描くセンスや、柏木を慕うデシ子のカワイイ造形など、読む者の共感を呼ぶ魅力的なキャラクターを描く力が圧倒的でした。
 泉貴大さんの『コトモノオト』は、独自の世界観が秀逸な作品です。王道の異能力バトルながら、設定の斬新さで、類型的な異能力バトル作品から一歩抜きん出ています。
 里野修平さんの『僕たちは、監視されている』は、登場人物の繊細な心理描写が最も魅力的な作品です。主人公・祭や同級生・ユイガの感情の機微を丁寧に描き、個々のキャラクターの葛藤や想いを浮き彫りにしています。
 木野裕喜さんの『暴走少女と妄想少年』は、登場人物の会話のテンポとセンスの良さが光る作品です。王道ラブコメに真っ向から挑戦しながら、今的な感覚を上手く会話の中に盛り込んで、はじめから終わりまでイッキに、楽しく読ませる力を持っています。
 選考は各編集者が2次選考を通過した23作品全てに目を通し、個々に印象に残った作品を選考会議で挙げながら、議論を重ねる形で行われました。それぞれの作品チョイスにバイアスがかかるのを避けるため、「どういった作品を選ぶか」といった、選出作品の基準を事前に設けることは敢えて行いませんでした。結果として、ジャンルやキャラクター要素といった、いわゆる“形”にこだわらない、その作品にしかない魅力や強さ、おもしろさをもった5作品が選出されたと思います。
 また、残念ながら今回は選に漏れましたが、3次選考通過に紙一重の差だった作品がいくつもありました。
 市川憂人さんの『こちらスノーホワイト科学分析部』は理系少女ものという題材が非常に新鮮で、詳細な科学知識に裏打ちされた謎解きにも説得力がありました。作中で巻き起こる事件のスケールにメリハリをつける事でより魅力的な作品になるでしょう。
 mcoさんの『二十一世紀妖怪談義 ハイスクール編』はテンポのよさと、ギャグセンスが非常に光った作品でした。短編集的構成の中に一本軸となるテーマを見出す事が出来ると、作品としてより際立った存在感を生みだすことができると思います。
 谷春慶さんの『ドラゴンスカイ』は直球の王道ファンタジーとして非常に完成度が高く、心理描写も丁寧で非常に好感がもてました。この作品であるからこそという、決定的な新鮮味を加える事が出来れば、もっと魅力的な作品になります。
 gigantさんの『そして英雄は終焉を迎える』はキャラクター、設定ともに非常にバランスの取れた作品で、ハッキングやバグなどのリアリティー要素と竜や天使といったファンタジー要素を上手く絡める手腕が光りました。キャラクターとストーリーにもう一捻り加えられれば、類型的な作品から脱却することが出来ます。
 冒頭でも述べたように、ここに挙げた作品はもちろん、その他の作品も非常にレベルが高く、選考は非常に困難でしたが、そうした中で、最終的に結果を分けたものは、他にはないその作品だけの魅力があるかどうかということでした。
 奇をてらった作品を求めているわけではありませんし、特定のジャンルやキャラクター要素といった“形”を求めているわけでもありません。ホームページの「『このラノ大賞』とは?」のページにも書かせていただいていますが、『このライトノベルがすごい!』大賞ではひきつづき、オリジナリティあふれる勢いある作品のご応募をお待ちしております!