第3回『このラノ』大賞 1次選考通過作品詳細

『竜の少女の世界録』 雨野ちはる

 幼い頃に巨竜『一つ眼』に父を殺された少年ハーディは、仇を討つために竜狩人と呼ばれる専門のハンターとして日々を暮らしていた。そんな彼の元にある日、「自分は竜だ。竜を狩るのをやめてほしい」と語る少女ルッテリーゼが現れる。

評価コメント

 世界観と物語の筋立てが明確で、恐ろしい竜とそれに挑みかかる人間などの見せたい情景がイメージしやすいところが良い。人が竜を狩る理由、竜が人を襲う理由についても「生命の循環」というキーワードでしっかり紐付けられていて、読み手にテーマを伝えつつ物語のスケールを大きくしています。主役のハーディとルッテリーゼに関してもどんな体験をし、どんなことを考えているのかわかりやすく描写しているので理解しやすく、共感も得やすい。脇を固めるサブキャラも多すぎず少なすぎずの程良い具合に配置されています。物語を単なる復讐譚に収めておらず、重いテーマにしっかり向きあおうとしている姿勢も好印象。エピソードは綺麗に一つの区切りを迎えているが、二人の旅はまだ続くことも示唆されていて、もっと彼らの旅路を追いかけ、その先にどんな答えを見つけるのか知りたくなる魅力があります。
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