第3回『このラノ』大賞 1次選考通過作品詳細

『ドアノブと地縛霊』 金治郎

 故郷に単身戻ってきた流瀬巧が住むことになった下宿先「清貧荘」。そこには3人の女性先住民――地縛霊が住んでいた! 彼女たちは不思議な“ドアノブ”の力で実体化できるが、そのドアノブが壊れた瞬間、成仏ではなく消滅する。そのタイムリミットが近いことを知った巧は、彼女たちの心残りを晴らし、成仏させると決意する。

評価コメント

 カギとなる設定が明快で、物語にすんなり入り込むことができました。投稿作では書く側の不安から、回収しきれない伏線や余計なエピソードを入れてしまいがちなものですが、このようにゴールを読む側に明示し、その上でまっすぐ物語を突き進ませる「作者の勇気」を高く買いたいと思います。また、セリフによるキャラクター描写(個性描写)が非常にうまい。説明やわざとらしいエピソードを用意するのではなく、主人公とのなんでもないかけあいの中で、自然にヒロインたちを好きにさせてしまうという作者の筆に、思わず感心させられました。
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