第3回『このラノ』大賞 1次選考通過作品詳細

『はんぶんのイチ』 飛山裕一

 高校入学を境に一切のやる気を失った平原不破人の家に、悪魔を自称する美少女が訪れる。彼女の名は夜月かがり。かがりの目的は平原と契約し、彼に女の子と恋をしてもらおうというものだった。しかし、平原もそう簡単に悪魔の望み通りになろうとはしない。かくして人間と悪魔の裏のかきあいが幕を開ける。

評価コメント

 やる気のない主人公のもとに美少女が訪れるという展開は王道ですが、冒頭から「これはデブが金網に挟まる物語だ」と言い切ってしまったり、ヒロインが転校生として学校に現れる際に、思いも寄らない姿になっているなど、一筋縄ではいかない展開で読者を良い意味で裏切ってきます。日常の何気ない会話や、主人公がクラスの女子にメールをする時のプレッシャーなど、等身大の高校生の空気もしっかり描かれています。やる気がなさそうに見えて、いざ困難に襲われた際には簡単に悪魔に頼ろうとせず、自分の力で解決をしようとする主人公の性格づけにも好感が持てました。一見ただのギャグにしか思えなかった一文や合間合間に出てくる相撲への偏愛が、後の展開の伏線になっているなど、構成の巧みさも見事です。
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