第3回『このラノ』大賞 1次選考通過作品詳細

『恋と誘拐と御伽噺』 濱田語録

 平凡な公立中学校の文芸部に所属する五人がリレー小説を始める。美少女のお嬢様で婚約者までいる利津、成績優秀な氷室、オタクな部長の中田、利津の友達の明美、ナルシスト気味なプレイボーイの大沢。二年前の誘拐未遂事件の影がちらつく中、彼らの関係はどう進展していくのか。そしてリレー小説の結末は?

評価コメント

 各人の書くリレー小説と作中現実に対する思いとのシンクロ、視点が変わるたび新たに明らかになっていく意外な事情や裏での人間関係など、とにかく小説としての構成が極めて巧み。後半になるにつれ、判明する事情も意表を突くものになってきて、最後まで楽しんで読むことができました。登場人物一人一人の造形が、ライトノベル的なエキセントリックさにはやや乏しいものの(それも後半に色々覆るけれど)、しっかりしていて読み応えがあります。それゆえに章ごとに視点がどんどん切り換わっても物語の行く末が気になるし、劇的な進展とまでは言えないながらも心穏やかに読み終えられる結末が心地いいです。
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