第3回『このラノ』大賞 1次選考通過作品詳細

『取り扱い危険な彼女達』 夕雲橙

 親の借金が原因で問題を起こし、転校してきた高二の少年・千鳥は、自殺しようと入った山でミステリアスな美少女・朝霧と遭遇し、エキセントリックな言動に気をそがれ、死に損なう。その朝霧の差し金で、翌日「自主部」部長の飾山と出会った千鳥は、なしくずしに仮入部ということになり、朝霧たちの特殊な一面と向き合い、いつしか深い仲になっていく。エキセントリック青春小説。

評価コメント

 幼児虐待にはじまる特殊な育ち方で、常人とはかなり異なる感性を持った朝霧と、かたや一見普通だが、やはりねじくれた過去を持つ千鳥。二人の関係は、エキセントリックで危なっかしく、それでいて甘く、読む者の目を惹きつけます。二人の掛け合いはラブコメのいちゃラブとしても上質。ラストの展開はおそらく賛否の分かれるところだと思われますが、各キャラが総じてまともではないことを印象づけ、他作品と差別化を図れるという意味で素晴らしいです。また、キャラを必要最小限に絞り込んだことで、各キャラの歪んだ心情がきちんと描写できています。
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