第3回『このラノ』大賞 1次選考通過作品詳細

『サマにならない英雄伝説』 遊馬足掻

 傭兵国家メンディエタに君臨する魔王を倒した主人公ラグナ。しかし、余りに強すぎる故、他の仲間の出番は一切なく、場は白け、英雄どころか疎外感だけが残る。その結果に、ラグナは自らの弱体化を決意。その方法を著名な占い師ルーネスに尋ねると、彼の身には10008の呪いがかかっていて、弱体化には呪いをひとつひとつ魔王レベルの邪心の持ち主に封じねばならないという。かくてラグナは、魔王を10008人育成することになってしまい……。

評価コメント

 既存の設定から一歩抜け出た個性的な設定の数々が魅力。魔王が主人公の話や、強すぎる英雄が国家から排斥の対象になる話は時々見ますが、最強主人公が強くなりすぎたことを憂い、自殺や世捨て人にという方向性ではなく、自身の弱体化を求めるとは想像の斜め上をいっています。また、ところどころに挟まれる小ネタが光っています。ルーネスの猟奇占いや、フォルトゥーナの賭事の借金をちゃらにするために結婚という提案が出てきたり、読んでいて「おっ」と思うことが多く、最後まで飽きることなく一気に読めました。ヒロインも、素直ではないけれど主人公を気にかけている様子がうまく伝わってきます。とくに、ラグナとルーネスの掛け合いはテンポがいい。 全体的にコメディテイストですが、重くなりすぎない程度にシリアス要素もうまく入れてあり、物語にメリハリがついています。
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