第4回『このラノ』大賞 1次選考通過作品詳細

『お姫様の奴隷』 シライ邦也

 騎士に憧れ聖ヨハネ騎士団に入団した中欧出身のレオだが、やっていることは地中海での異教徒相手の海賊行為。そんなある日、敵国海軍に敗退し、海に転落したレオは、異教徒の美少女ヒュリヤに命を救われる。敵国の都市チュニスで逃げるわけにもいかないレオは、ヒュリヤの父の仇らしき奴隷収容所所長への接触を図る彼女に付き合わされるのだが……。

評価コメント

 十七世紀初頭のチュニスという、日本人読者には馴染みの薄い舞台ながら、異文化交流冒険ストーリーをきちんと成立させています。賢く物知りで強く、そのくせ年相応の幼さもあるヒロインのヒュリヤがとても魅力的。続編で彼女がジパングや新大陸に出向いた時、どんな反応を示し何を言うかを想像するとわくわくします。無知だが善良で勇敢な主人公レオとの組み合わせもバランスが取れていて、読者をスムーズに物語の舞台へ引き込むことに成功しています。理想主義者な司祭や北欧からさらわれてきた少女など、脇役もバラエティ豊か。犯人の動機が、当時の国際情勢に絡んでいる点も興味深いです。
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