第4回『このラノ』大賞 1次選考通過作品詳細

『それは時を駆ける魂』 矢凪誠治

 中二病を患っていた柊一真は、その過去を払拭するため地元から遠く離れた高校に入学した。しかし、すれ違いざまクラスメイトの天音とぶつかり、中二病時代に書いた黒歴史ノートを見られてしまう。馬鹿にされるという柊の予想を裏切り、天音はそのノートに感銘を受け、悪の組織に対抗する部活を作るという。部員も集まり部活として活動し始めた矢先、柊は部員の桜木に無理心中させられる。

評価コメント

 中二病という設定を活かしながら、その典型的な方向とは逆のほうに展開していくという構造がきちんと作られています。何度も同じ時間を繰り返していくうちに、徐々に明らかになっていく事実。それをうまく処理していて、流れをつくっているところからも、構成の骨格がしっかりしていることが窺えます。どの時点でどの情報を明らかにしていくかという割り振りがきちんとしているので、繰り返しという単調になりがちな構成でも、先へと読ませる話でした。キャラクターも人数が多い中、それぞれの役割を書き分けられているのが良かったです。
一覧に戻る