第4回『このラノ』大賞 1次選考通過作品詳細

『魔の住む街』 水鏡希人

 気になっていた同級生の望美にいきなりキスされた帰り道、由真は同じ学校の生徒と思しき女子に襲われて、辛くも難を逃れる。その際、叔母にもらったアクセサリーが壊れてしまう。翌日、望美は打って変わってつれない態度。昼休みに遭遇した昨日の女子は、玲韻と名乗るがこれまた冷淡な態度。帰り道に叔母の店へ寄った由真は、叔母たちの秘密を知らされ、後をつけてきた玲韻とともにある事件の解決に取り組むことになる。

評価コメント

 短い分量の中で、適度な数の登場人物を適切に動かして、よくまとまった物語に仕上げています。スリリングな冒頭に始まり、謎を追うサスペンスフルな中盤、大きな山場を一度越えた後の、伏線を活かした謎解きを経てのクライマックスと、構成が実にしっかりしています。主人公への感情移入が冒頭からスムーズに進展するおかげで、一気に最後まで読めました。文章が巧みで、小説として十分読み応えがあります。また、地方都市と魔法の関係性が、地に足の着いた感じでユーモラス。遺産相続のどさくさで魔術書が流出してしまうという俗っぽさが、不思議といい味を出しています。
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