第4回『このラノ』大賞 受賞作品詳細

第4回『このラノ』大賞 / 優秀賞

『非モテの呪いで俺の彼女が大変なことに』 藤瀬雅輝

作者プロフィール
茨城県在住。阪神ファン。好きな漫画は『るろうに剣心』『魁!男塾』など。好きなアニメは『機動武闘伝Gガンダム』。好きな刑事ドラマは『特捜最前線』、好きな時代劇は『新必殺仕置人』。射手座。A型。
WTRPG「エリュシオン」(http://www.wtrpg9.com/)にも、「茶務夏」名義でライターの一人として参加中。

あらすじ

「俺は、クラスメートの那須谷繭香に恋してる」五月のとある木曜の五時間目、カミナリに打たれるように、自分の恋心に気づいた主人公・宮岡貫平は、その日の放課後に繭香に告白を決意した。恋の萌芽をキャッチした担任の月影紗綾先生に全力で阻止されそうになったが、覆面をかぶった謎の生徒集団が協力もあり、貫平は繭香に愛の告白をした。彼女との愛に満ちたバラ色の日常生活が広がる……はずだった。誰もが羨むカップルがターゲットになってしまう学園に存在する〈呪い〉によって、繭香は様々な個性を奪われてしまう! 〈呪い〉を解くには、期限内に呪者を見つけ打ち破る儀式をしなければならない!二人のラブラブながらも受難の日々が始まった! 第4回『このライトノベルがすごい!』大賞優秀賞受賞作!

受賞コメント

 三つ子の魂百までと言いましょうか。子供の頃に、末吉暁子『かいじゅうになった女の子』や山中恒『おれがあいつであいつがおれで』を読んで心ときめくものを覚えた性癖は何を経ても変わらず、美少女が○○になったり××になったり▲▲▲▲になったりする話を書いたところ、幸運にも受賞させていただいた上に出版の運びとなりました。これからも同好の士の期待を裏切らず、さらには無自覚でいた方のツボを突いて新たな仲間にできるよう、変化と変容の物語を書いていければと思っています(匙加減を間違えるとすぐ、日本語を読める人の中で自分を含めて三十人くらいしか喜ばないような話になるので、バランスの取り方が最重要ですが……)。
 ただ一方で、子供時代から漫画や小説で培われた「後味の良いハッピーエンド」路線への愛着も抜きがたく。この物語も、読み終えた際に「ああ面白かった」と感じていただけるよう、時に明後日の方向へさまよいつつも、努力し続けるつもりです。

最終選考委員選評

勝木弘喜(ライトノベル・フェスティバル初代実行委員長)
極楽トンボ(評論家、HP「まいじゃー推進委員会!」管理人)
タニグチリウイチ(書評家)
工藤淳(「まんが王八王子店」小説担当)
吉原圭司(「コミックとらのあな」)
特別選考委員栗山千明さん選評はこちら


勝木弘喜(ライトノベル・フェスティバル初代実行委員長)

 いきなり告白から始まり、主人公とヒロインのカップル誕生。ライトノベルとしてはオチモノ的なハーレム展開が消滅して不安になりましたが、読み進めてびっくり。まさかの純愛小説、いや純愛ライトノベルでした。主人公の貫平は正義感の強い一本気のある男の子、ヒロインの繭香は可愛いが控えめな性格の女の子。ヘタレとツンデレが主流の今、これまたライトノベルらしからぬ二人といえます。ラノベらしからぬ展開でラノベらしからぬキャラですが、この作品を強烈にラノベとしているのは「非モテの呪い」というシステム。在学中に誕生した素敵なカップルに発動するリア充爆発しろな呪いですが、ヒロインが太ったり性格が悪くなったりと大変。そしてそれに立ち向かう二人の姿が純愛していてとても良かった。純愛ラノベ、好きかもしれない。

極楽トンボ(評論家、HP「まいじゃー推進委員会!」管理人)

 呪いシステムという入れ替わりものをさらに一捻りしたようなアイディアが上手かった。また、この物語にとって不可欠の存在であるラブコメ部分において、主人公とヒロインの相思相愛っぷりがこれでもか! というくらいに描写されていたのも高評価の部分。一部TSものめいた展開があるのだが、ここもよく書けており、作者の新作TSものを読んでみたいと思わせてくれた。ただ、作品の根幹をなす呪いシステムの設定がラノベという媒体にはいささか重すぎたので、ここは発売時にどうなっているか気になるところ。

タニグチリウイチ(書評家)

 たとえ姿形は変わっても、その人格を愛するという気持ちに変化はないのだと訴えるような強い主題があり、移り変わっていく彼女の姿態がデブだったり、男の娘だったりデレないツンに見えて実はナイーブな部分もある性格だったりと様々な点も、読んでいて次に何が来るのかと期待させる味がある。巨躯を持たされてしまったりドジにさせられたりしても変わらず愛してくれる人がいたり、心配してくれる友人がいたりするところにも好感。通して読んだときにこみ上げてくる感動を味わおう。

工藤淳(「まんが王八王子店」小説担当)

 成立したカップルの女子に襲いかかる学校の呪詛システムを主人公がヒロインラブでのりきるまさしくラブコメ。呪詛システムの交換のせいで毎回いろんな状態のヒロインが見れるのはおもしろい。良いも悪いもあるがそれすらも受け入れる主人公のヒロインラブさがすごい。むしろ、このヒロインラブさが終盤の詰み状態への布石だとおもうと作者の構成もすごい作品。ただ、呪い解除に失敗した時のペナルティが重い。そこに気づかず読んでいるうちはいいのだが、気づいてしまうとたしかに重く感じてしまい素直にラブコメとして楽しめないのが難点。

吉原圭司(「コミックとらのあな」)

 昨今のライトノベルでは珍しく、主人公が女性ヒロイン一人を一途に愛する物語です。これだけだとう~ん、と思ってしまうそこのあなたに朗報です。こちらの作品ですが、一人のヒロインだけで何パターンものヒロインを味わえる作品となっております。清楚な男の娘、ツンデレ、ぽっちゃり、といった様々なタイプが揃っております。主人公が浮気者? 大丈夫です。これは呪いですから。純愛物であるが、いろんなパターンのヒロインを楽しめる。そういった矛盾を設定できちんと解消し、面白いストーリーの作品としてまとめる作者の力量に脱帽です。素直に面白い、そんな作品です。