第4回『このラノ』大賞 受賞作品詳細

第4回『このラノ』大賞 / 優秀賞

『ヒャクヤッコの百夜行』 サブ

作者プロフィール
本州の隅っこで、うだつの上がらない毎日を細々と生きています。
好きなものは車と東方シリーズとエクレアです。
口癖は『金ならある』

あらすじ

 高い霊能力を持つ家系に生まれた高嶺裕也は、父親で超ダメ人間の金剛の尻拭いのために、とある学園の怪奇事件を解決する仕事を請け負うことに。転校生として学園に潜入した裕也は、こっくりさんの怪異と融合した狐耳の少女・百留谷津子(ウザさ120%)と出会う。裕也に一方的な恋心を抱く谷津子(マジ激ウザ)に手を焼きながら、裕也は怪異退治に学園にやってきたことを明かさぬままに、その原因を探っていく。その過程で裕也は多くのユニークな怪異たちと出会う。しかし、ある日、谷津子が裕也の本当の目的を知ったところから事態は思わぬ方向に転がり始め……。ウザカワ(イイ)度120%の狐耳ヒロインと退魔の能力を持つ少年が巻き起こす、痛快学園妖怪ラブコメ&バトル!

受賞コメント

 はじめまして、サブと申します。この度はこのような賞をいただきまして大変光栄に思います。これも多くの人の力添えがあってのことです。ありがとうございます。ここに至るまで投稿を初めて四年程かかりました。物語を書き始めてからは七年です。元々小説嫌いで、基礎も何も知らない状態からようやくここまで辿り着きました。しかし、これは残念ながらゴールでないことも自覚しています。準備運動を経てようやくスタートラインに立てた感じです。どこまで走れるか分かりませんが、力の続く限り頑張ろうと思います。
長々と話すのもあれなので最後に一言。

店頭に並んだら買ってください!!(ステマ)

最終選考委員選評

勝木弘喜(ライトノベル・フェスティバル初代実行委員長)
極楽トンボ(評論家、HP「まいじゃー推進委員会!」管理人)
タニグチリウイチ(書評家)
工藤淳(「まんが王八王子店」小説担当)
吉原圭司(「コミックとらのあな」)
特別選考委員栗山千明さん選評はこちら


勝木弘喜(ライトノベル・フェスティバル初代実行委員長)

 強い霊能力を持った主人公の裕也が、ダメ親父の尻拭いにある学校の怪異を解決することに。転入した裕也は強い妖力を感じ驚くが、現れたのは勘違いか思いこみかウザくつきまとう獣耳少女、ヤッ子だった。というホラー×コメディの黄金パターン。しかし、この作品は日常系というか脱力系というか、ゆるい笑いを誘う珍しい作品で感心させられました。とにかくウザくて可愛いコックリさんのヤッ子を筆頭に、骨格標本やゾンビ、チュパカブラといった誰もが知る怪異たちが、「そっちかよ!」と思わずツッコミを入れたくなるようなキャラクターになっています。キャラの笑いで押し切るかと思いきや、バトルまで盛り込む展開。応募作の時点では完成度が低く、評価を下げてはいますが、もっとも可能性を感じた作品です。

極楽トンボ(評論家、HP「まいじゃー推進委員会!」管理人)

 評価ポイントとしては、なんといってもヒロインのヤッ子のうざかわいさに尽きる。すごくうざったい感じなのだが、そこが魅力で目が離せない。遠慮なく主人公に迷惑をかけてほしい。怪異コメディとでも言えばいいのか、とにかくものすごくゆるく、肩肘張って読むような物語ではないのだが、妙にこのゆるさが心地よくなってくる。せっかく出てきた個性的ですっとぼけた怪異たちが生かしきれてないなどの改善点はあるが、どうかこの独特なゆるさは保ち続けたままで成長していってもらいたい。変につきつめない自然体の方がおそらくこの作者は光るのでは。

タニグチリウイチ(書評家)

 次から次へといろいろな展開があって飽きずに読んではいける。主人公の高嶺裕也という少年が見せる強さと優しさ、ヤツ子というキャラクターの賑やかさもあって最後まで引っ張っていってもらえる。学校の怪談系という類例の多いカテゴリーにあって、他との差異もあまり出しづらい中で、読んで楽しい作品というのはポイントが高い。人体模型と骨格模型が化けると美少女だったりと、キャラクターにも多彩さと愉快さがある。とことん楽しもう。

工藤淳(「まんが王八王子店」小説担当)

 学校の怪談をテーマにした作品は多くありますが、その数を108個まで増やした作品はそうそうないかと。ただ、ちょっと怪談を増やしすぎたせいかそのひとつひとつの扱いがぞんざいになってしまっている。登場する怪談自体はおもしろいのでもう少しバランスがとれるとおもしろくなる作品だとおもいます。また、主人公の悪っぽさ、ヒロインのバカっぽさなどメインキャラクターだけでなく、主人公の父親や怪談などのサブキャラたちにも魅力を感じます。

吉原圭司(「コミックとらのあな」)

 主人公裕也には怪異を退治する能力があり、学校の怪異退治に臨む。そこで出会った美少女の怪異 ヤッ子にほれられ……どこかで見たことがあるようなストーリーと思うかもしれませんが、読むときちんと面白い! 谷津子が非常に魅力的であり、素直に可愛い。駄目親、主人公の父金剛や怪異ゾンビ吉田等、魅力的な脇役も多数登場し、展開の盛り上げに一役買っています。正統派なライトノベル、というと異論があるかも知れませんが、私は第一印象としてそう思った作品です。