第2回『このラノ』大賞 1次選考通過作品詳細

『良い子と悪い大人のための平成夜伽話』 橘圭郎

 妖怪が生きている世界で語られる3代の物語。昔話風に語られる現代的な物語であり、時間軸が交錯し、「語り」が前面化し、バラバラであったはずの物語が1つの愛と、世界の崩壊の物語へと収束していく。それは「未来」の消滅にまつわる物語であった……。

評価コメント

 昔話風の語りなのに、ギャルゲーが出てきたり携帯電話が出てきたりと、文体と内容のギャップを利用したユーモアに作者の力量を感じました。読者を飽きさせずに複雑な時間軸の物語を「語る」。そのテクニックには舌を巻きます。細切れの物語が細切れであるが故に謎を呼び、収束していくところで「読者」を引き込むテクニックも素晴らしい。そして最も感心したのは「3世代」の仕掛け。読んでいる途中で「これおかしいよなぁ?」と思っていたことがきちんと設定にくみ込まれていた上、作品のテーマとも結びついていたことは快感でした。形式と内容とテーマを見事に一致させた力量に、素直に驚かさせれました。

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