第2回『このライトノベルがすごい!』大賞 最終選考結果

第2回『このライトノベルがすごい!』大賞決定

第2回『このラノ』大賞

大賞:『モテモテな僕は世界まで救っちゃうんだぜ(泣)』谷 春慶(たに・はるよし)

(応募時タイトル:「ウーマナイズ・ジェネレーター」)
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栗山千明賞:『美少女を嫌いなこれだけの理由』遠藤 浅蜊(えんどう・あさり)

(応募時タイトル:「B級少女」)
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優秀賞:『ドS魔女の×××』藍上 ゆう(あいうえ・ゆう)

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優秀賞:『僕と姉妹と幽霊(カノジョ)の約束(ルール)』 喜多 南(きた・みなみ)

(応募時タイトル:『恋色ゴースト』)
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優秀賞:『R.I.P. 天使は鏡と弾丸を抱く』深沢 仁(ふかさわ・じん)

(応募時タイトル:『撃ち抜けないのは天使と破片』)
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※金賞該当作なし

総評

勝木弘喜(ライトノベル・フェスティバル初代実行委員長)
極楽トンボ(評論家、HP「まいじゃー推進委員会!」管理人)
タニグチリウイチ(書評家)
工藤淳(「まんが王八王子店」小説担当)
川崎拓己(「コミックとらのあな千葉店」店長)
編集部より
特別選考委員栗山千明さん選評はこちら

勝木弘喜(ライトノベル・フェスティバル初代実行委員長)

 なんとまあ、今回もバラエティ豊かな作品が揃ったことでしょうか。エロあり、ハードボイルドあり、バトルあり、ラブあり、美少女(文字通り)あり。それぞれ一括りにできない面白さがあり、一言で纏められない魅力があります。それゆえに、ライトノベルの裾野の広がり、懐の深さを実感した選考でもありました。また、第一回で惜しくも落選となった方が今回も応募されて、見事最終選考まで残られているのも嬉しく思います。当然ですが、選考委員は自分が担当した投稿作のことを覚えているものです。今回落選された方も、あきらめず投稿を続けていただきたいですね。
 前述の通り、最終候補作は多様だったわけですが、選考は驚くほどすんなりと決まりました。もちろん、様々な意見がだされ、作品ごとに深く考察されましたが、よりライトノベルとして面白い、より『このライトノベルがすごい!』大賞らしい作品が評価されたのだと思います。だからといって、今後も似た作品が評価されるとは限りません。今一度自分が書きたいことを見つめなおして、ライトノベルでしかできないやり方で、ライトノベルでしか描けない自己表現をしていただきたいと思います。

極楽トンボ(評論家、HP「まいじゃー推進委員会!」管理人)

 『このライトノベルがすごい!』大賞の選考に参加させていただくのは二回目となるが、前回と比較してやや小粒にまとまった感はあるが、全体的に文章力などのレベルはあがっていると感じた。送る側にも第一回の受賞作という先例があるために、ライトノベルらしい作品が増えているようだ。
 『ウーマナイズ・ジェネレーター』(刊行時タイトル:『モテモテな僕は世界まで救っちゃうんだぜ(泣)』)は、非常にライトノベルらしいハーレム展開を描きながらも、女好きを「病気」と位置づけ設定を作り込むことで個性を出すことに成功しており、まだまだラブコメ的な世界も奥が深いと感じさせられる。『ドS魔女の×××』は典型的なエロコメの部類だが、やはり舞台設定などが秀逸。
 そんな中でもっとも目を引いたのは『B級少女』(刊行時タイトル:『美少女を嫌いなこれだけの理由』)だった。これはある意味「美少女」というライトノベルでのお約束を逆手に取っており、他の追随を許さない個性が光る作品だった。逆に強すぎる個性が物議を醸す結果となったが、これから賞を目指す方にはこじんまりとまとまるよりは、これくらい思い切って何かひとつ突出した部分を持った作品を生み出すことを意識してほしい。

タニグチリウイチ(書評家)

 基準が示された。ならば逸脱して幅を示すべきか。続けて存在感を高めるべきか。第2回となった「『このライトノベルがすごい!』大賞」を選ぶにあたって、SF異能バトルという王道作品『ランジーン×コード』が授賞した、第1回の選考結果をひとつの基準に、どちらの方向をめざすべきなのかを考えた。
 幅を選ぶなら、美少女というライトノベルに絶対に欠かせない要素を逆手に取って、人類とは違った存在としての“美少女”を作り上げ、物語にぶちこんで見せた『B級少女』(刊行時タイトル:『美少女を嫌いなこれだけの理由』)こそが相応しい。しかし、“美少女”という観念を読む人に問う物語を、2回目にしてぶつけるのは冒険が過ぎる。今はまだ「ライトノベル」と呼ばれる分野にすんなりとけこめる作品を選び、賞としての、レーベルとしての存在感を上積みすべきではないか。
 そうなった時、美少女たちに囲まれてモテまくる少年という、ライトノベルの読者なら誰だって望むシチュエーションを、選んで描いた『ウーマナイズ・ジェネレーター』(刊行時タイトル:『モテモテな僕は世界まで救っちゃうんだぜ(泣)』)が、大賞として浮かび上がって来た。どちらが上で下ということではない。覇道に乗り出す前にまずは王道によって土台を固める。安定した地より豊潤な営みが生まれ、自然と広がっていった果てに、覇権は自ずと築かれるのだ。
 エロにハードボイルドに学園ファンタジーと、最終選考に残った他の作品も、ジャンルとしては多彩だった。ミステリーや異世界ファンタジーといった作品でも、面白ければチャンスはある。時流にそぐわないからといって、遠慮する必要もない。変化の激しいライトノベルでは、邪道が明後日にも正道になり得る。誰かを楽しませたい、驚かせたいという強い意志さえ底にあれば、あとは読者が判断する。
 迷わずに書くこと。書きさえすれば結果は必ずもたらされる。

工藤淳(「まんが王八王子店」小説担当)

 選考作品を読んだ時に去年の作品と比べると確実にレベルは上がっているなという感じがしました。5作品はまさしくいまどきのライトノベルという感じで、普通に売っていてもおかしくないレベルと思えました。とんがってるのが1作品いますが……ただ、作品のバリエーション的には去年のほうが面白かったという印象です。早まる発売ペースの維持や流行のネタ的の使い方などで、ライトノベルのテンプレート化というのが進んでるとおもいます。
 ウケる要素を集めて書かれた小説は確かに面白いですが、繰り返し読まれ、残る作品にはなりにくいです。そういった意味でもやはり最終選考に残るほどのファンタジー作品を待っています。今年も最終選考まで残ったファンタジー作品はありませんでした。二次選考まではあったようですが、三次選考には一作も……。良いファンタジー作品というのは、他者を魅了できるほどの自分独自の世界観を展開できる作品です。テンプレ化が進むライトノベルの中で、そういった面白いものがもっともっと読めることを望んでいます。

丸山晋司(「コミックとらのあな」)

 書店員として、日々多くのライトノベルに接しておりますが、今回、この世の中に生み出される作品を発売前に読ませて頂いたのは初めての経験であり、非常に楽しく参加させていただきました。
 最終選考に残った作品5タイトルですが、それぞれの作品が非常に個性的なものであり、全ての作品に魅力を感じました。その中でも目を惹いたのは『ウーマナイズ・ジェネレーター』(刊行時タイトル:『モテモテな僕は世界まで救っちゃうんだぜ(泣)』)。
 非常に高い完成度の作品で、発売されている商品に遜色が無いレベルの「ライトノベル」に仕上がっていました。昨今のライトノベル好きな学生さんにオススメしたい作品です!
 第3回『このライトノベルがすごい!』大賞の選考には、前回・今回と最終選考では見受けられなかった「ファンタジー」を題材とした作品が出てこないかなと期待しています。
 20代後半~30代のライトノベル読者としては、昨今の学園モノや能力者(異能者)の話も良いですが、ファンタジーに飢えています。ファンタジーは任せろ!と思っている人は、その想いを物語にしてぶつけて下さい。次回の選考員の方々も、きっとを真摯に受け止めてくれます!

編集部より

 おかげさまで、『このライトノベルがすごい! 』大賞も第2回を開催する運びとなりました。ご応募いただいたみなさま、そして、当賞に関心を持っていただき、このサイトを今まさに見ていただいている皆様に、厚く御礼申し上げます。
 昨年度同様、今年もたくさんのご応募を頂き、昨年1月の締め切りから、厳正なる選考を経て、大賞1作、栗山千明賞1作、優秀賞3作が決定いたしました。(金賞該当作なし)
 応募作全体としましては、昨年と比較して、非常にライトノベルらしい作品が増え、作品全体の水準が総じて高かったという印象でした。
 また、昨年度に引き続き、今年もご応募をいただいた方が多く、結果として、最終選考に残った5人のうち、お2人が2年連続での応募者だったというのは、編集部としても非常にうれしい驚きでした。諦めずに挑戦した結果がここにあるのだと思います。 最終選考に残った5作品はバラエティに富んだ作品で、どの作品も著者の描きたいものが非常に明確な作品ばかりだったように感じます。加えて、それをいかに読者に伝えるのかといった部分にまで、気配りが出来ている作品が上位に来る結果になったように思います。
 引き続き、編集部は皆さんそれぞれの「すごい!」を突き詰めた作品のご応募をお待ちしております!
 受賞作5作は、2010年9月10日に5冊同時刊行される予定です。受賞者それぞれの「すごい!」を突き詰めた結果がここにあります。応援よろしくお願いいたします。
 そして、既に第2回『このライトノベルがすごい!』大賞の応募も始まっています。
 「すごい!」とは「おもしろい」であり、「カッコイイ」であり、「かわいい」でもありえる。オリジナリティのある設定や、飛びぬけたキャラクターの魅力など、書き手の数だけ無数にある「すごい!」という感覚。自分自身の「すごい!」を極限まで突き詰め、それを読み手に伝えるための努力を惜しまなかった作品こそが次の大賞に輝くはずです。皆さんの「すごい!」作品を引き続きお待ちしております!