第2回『このラノ』大賞 1次選考通過作品詳細

『御座敷のマツリと幸せの在処』 とよのかけん

 座敷童子の住む世界《御座敷》で大学を卒業し、人間世界で仕事を始めることになった安藤茉莉。仕事とは、畳のある場所に居着き、住人の幸運を増幅する代わりに幸せな住人から生じる物質《コウ》をもらうこと。茉莉はとある高校の寮の1室に畳を見つけ、そこに落ち着く。その部屋に住むのは、飛び級制度で高校に入って2年目の12歳・太一で、珍しいことに彼は座敷童子を見ることができた。2人の奇妙な生活が始まるが、太一が憧れる同級生・あかりに、教頭の車を壊したという疑いがかかり……。

評価コメント

 主役コンビの太一と茉莉が魅力的。見た目10歳の偉そうだけど根は優しい茉莉もステキですが、12歳で高校2年生という立場に恥じない太一の賢さや理解の早さも読んでいて好感が持てました。太一の時折見せる子供らしさも可愛らしく、男子連中にひどいいじめを受けて男性恐怖症気味になり男の少ない高校(元女子高)に来たという設定も悪くなかったです。他人に見えない座敷童子に調査を協力してもらうというミステリー仕立ての展開もおもしろかった。また、座敷童子を登場させるだけあって幸運や幸福というテーマが一貫して描かれ、ラストシーンには頬が緩みました。続きを読んでみたいと思わせる力がある作品です。

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