第2回『このラノ』大賞 1次選考通過作品詳細

『BRAIN 蝶ノ揺り籠』 辿夢龍

 チェインと呼ばれる脳内集積回路が普及した遠未来。平穏な日常に違和感を感じる晶はある日、導かれるように透明な扉を通り、有害な光子が降り注ぐ外界に出てしまう。そこで晶は光子に適応した人々と研究者に迎えられるのだった。

評価コメント

 まず、脳内集積回路が普及し情報共有された遠未来世界――という描写に引き込まれました。特殊な設定は説明に費やす文章量が増えがちですが、それを授業や友達との会話といった日常描写にうまく取り入れています。さらに晶が感じている蛹に例えられる違和感など、登場人物の微妙な感情の描写が見事です。遠未来でしか表現できない世界、遠未来でしか感じられない感情、そして遠未来でしか成立しない進化というストーリーを真っ向から描き切り、飲み込まれるような小説世界が構築されています。

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