第2回『このラノ』大賞 1次選考通過作品詳細

『乙女の通い路!』 冬野柿子

 扶桑国で名高い才媛・尾之上真中(まなか)は遣唐使の長として蘇州に上陸したが、その才能に怖れ慄く唐の朝廷によって幽閉される。昔同じような目に遭った遣唐使・阿倍野紬子(ちゅうこ)の霊と出会い、その協力と自らの鬼道によって数々の難問を攻略する。これに業を煮やした幼女皇帝玄宗が難題を携え直接蘇州に訪れるが、真中はそれすらも解き明かしてしまう。だがその頃、都の長安では廃嫡姫・太平公主がクーデターを実行に移さんとしていた。

評価コメント

 端的にまとめれば「ドキッ!美少女だらけの吉備真備伝説!九尾の狐も暴れるよ」というところでしょうか。伝説の筋立てはそのままに、登場人物だけ全員美少女化した序盤はやや単調ですが、幼女玄宗や九尾の狐が直接関わってくる中盤から独自性を見せ、終盤は史実における唐の混乱と絡めてアイデア盛りだくさんの怒涛の展開で楽しませてくれました。擬古文的な地の文(実に達者)や真中らの口調と、紬子や幼女玄宗の砕けたしゃべり方が混在することで、中華風歴史ファンタジーの雰囲気を出しながら、読みやすさを損なっていません。キャラクターも、優秀ながら壮絶な過去を抱える真中と能天気な紬子のコンビ、わがまま幼女から成長していく玄宗と複雑な立場で彼女を補佐する玉環のコンビなど、それぞれがよく描けていました。

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