第2回『このラノ』大賞 2次選考通過作品詳細

『美しき豹と、黄河の花嫁』　清水タキ

評価コメント(1)

　古代中国の水害対策のディティールが読ませます。古代社会のきれいごとではすまない血なまぐさい部分が実によく描かれていて、大いに興味をそそられました。

評価コメント(2)

　規定枚数ギリギリまで書かれているにも関わらず、そのボリュームを感じさせないおもしろさがありました。紀元前５世紀の中国が舞台のいわば歴史ものに近い設定で、魔法や萌えは一切出てきませんが、絶妙なストーリーテリングに引き込まれます。「悪者は退治され姫は救われ」といった一本調子の感がなく、必要なときに必要な残酷さをドライに入れ、感情的になりがちな小説という伝達手段を十分に理解した上での高いエンターテインメント作品に仕上げています。主人公の１人である月影が自由の身になってもストーリーは続き、憎しみが新たな憎しみを生むという大テーマをさらに深く追求していく。それでいて心象世界に没入するでもなく、事象としての新たな展開が開けるという、読者を飽きさせない素晴らしい作品です。

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