第2回『このラノ』大賞 2次選考通過作品詳細

『サンタが街にやってくる』 白木知佳


評価コメント(1)

 「サンタ」と「トナカイ」の設定が非常にユニークで、読ませる力があります。また本編の主人公たる岳志と郁子の造形、そして2人の過ごした日々の描写も実によかった。中学・高校・もしくは大学で何かしらの鬱屈を抱えたことのある人間ならば(つまりほとんどすべての人が)誰しも共感できる息苦しさとつらさと切なさを、多くないページ数の中に巧みに描き出しています。

評価コメント(2)

 和服姿のサンタクロースや人間の姿のトナカイなど、突飛な発想をとりまぜながらも臨場感溢れる描写でとても楽しく読めました。深澤郁子の願いだった深澤組を潰すための主人公の奮闘ぶりや組を潰す計画がリアルで、ついついページをめくってしまいました。なかでも今までに100人は殺したというトナカイの訓練は殺し屋を育てるかのようで、主人公が哀れに思えるほどでした。とにかく文章が達者で、本編でサンタが登場するまでしばらくありますが、日常の何でもない描写までじっくり読まされました。中盤、終盤とペースが崩れず、ちょっとした驚きとほろりとくるラストもよくできています。


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