大賞賞金500万円、金賞200万円、優秀賞100万円! 第5回『このライトノベルがすごい!』大賞選考結果発表!
第3回『このライトノベルがすごい!』大賞 受賞作一覧
第3回『このライトノベルがすごい!』大賞決定
大賞:『ロゥド・オブ・デュラハン』 紫藤ケイ(しどう・けい)
(応募時筆名:松崎)→作品詳細
栗山千明賞:『擬態少女は夢を見る』 島津緒繰(しまづ・おぐり)
→作品詳細栗山千明賞:『サマにならない英雄伝説』 遊馬足掻(ゆうま・あがき)
→作品詳細優秀賞:『オレを二つ名(そのな)で呼ばないで!』 逢上央士(あいうえ・おうじ)
(応募時筆名:逢上翁児)→作品詳細
優秀賞:『はんぶんのイチ』 飛山裕一(とびやま・ゆういち)
→作品詳細優秀賞:『剣澄む~TSURUGISM~』 ますくど
→作品詳細※金賞該当作なし
総評
→ 勝木弘喜(ライトノベル・フェスティバル初代実行委員長)→ 極楽トンボ(評論家、HP「まいじゃー推進委員会!」管理人)
→ タニグチリウイチ(書評家)
→ 工藤淳(「まんが王八王子店」小説担当)
→ 川崎拓己(「コミックとらのあな千葉店」店長)
→ 編集部より
→ 特別選考委員栗山千明さん選評はこちら
勝木弘喜(ライトノベル・フェスティバル初代実行委員長)
未来に繋がった、それが選考会を終えたときの感想です。漠然とした予感でしかありませんが、受賞した6作品は今後の応募作に大きな影響を与えるのではないでしょうか。もちろん、前回までの受賞作に影響力がないわけではありません。しかし、今回最終選考に残った作品は、これまでにはなかったグルーヴを感じます。点と点だったものが線で結ばれるような、小川が集まり大きな流れになるような、一体感。部活モノ、ダークファンタジー、異世界コメディ、異能力モノ、剣豪バトル、悪魔契約モノと、同じ傾向の作品はないのに奇妙な感覚です。今回の選考の決め手は、ポジショニングにありました。どの作品が飛びぬけて優れていた、ということではありません。バランス的にこの作品が、ここにあるとおさまりが良い、ということです。ですので、受賞者の皆さんには、自分の作品が一番面白いのだという気持ちをもって、作品のポテンシャルを最大限に活かすように出版に向け改稿していただければと思います。
完成度の高い作品はあっても、完成された作品はありません。過去の受賞作に偏りがあっても、次回も同じ傾向になるとは限りません。全ては未知の領域です。以前から繰り返しお伝えしてきたことですが、ならば自分が書きたいと思える作品をとことんまで突き詰めて、書ききっていただきたい。これからもそんな作品を読みたいと思います。
極楽トンボ(評論家、HP「まいじゃー推進委員会!」管理人)
第3回ともなると、徐々にレーベルカラーができあがるものか、どちらかというと王道ラブコメは少なく、少し尖った部分のある変化球が多いという印象を受けた。『ロゥド・オブ・デュラハン』はそんな中、今まで不足していた本格ファンタジー成分を一挙に補ってくれる期待を持たせるものだ。ストーリーにも適度な捻りがあって読者を飽きさせない。個人的には『サマにならない英雄伝説』も俺様最強系のエンタメに一石を投じる作品として同じくらい評価している。ただ、この作品は投稿時点で前半後半であまりに話の雰囲気が違ってしまっていることがマイナスで、今後投稿を考える人には作品全体での作風の統一感まで気を配って欲しい。統一という意味では、『剣澄む~TSURUGISM~』でもせっかくのシリアスな剣劇の世界観を、妙に現代っぽい部分が説明なく登場して崩しているのが見受けられたのが惜しかった。こういうのもきっちり統一してもらいたい部分である。
全体としては、初回に比べると作品レベルが確実にあがっているのを感じ、頼もしい。
審査員の個人的要望としては、良質なスポ根ものが出てきてくれれば言うことはないのだが。実は今回送られた投稿作品の中にもスポ根があり、なかなかよく出来ていたが「商業作品として世に送り出す」部分での厳しさがあって最終選考に残るまでに到らなかった。もともとスポ根はラノベの中でもややマニアックな部類だが、スポ根に限らずマニアックなものは独自性という大きな武器を持つ代わりに、読者を限定してしまう。そこで鍵となるのが、マニアックな内容にはさほど興味のない多くの読者にも訴えかける別要素だ。要はバランスの問題で、実際そこを上手く料理したスポ根ヒット作も最近出ている。ぜひ意欲作を期待したい。
タニグチリウイチ(書評家)
『このライトノベルがすごい!』大賞が始まったのがだいたい3年前。その頃だってライトノベルは、レーベルの数を増やし、刊行点数を増やしてものすごい勢いで広まっていた。それが最近は、レーベルとか文庫サイズとかいった枠をはみ出して、ライトノベルっぽいものが世の中にあふれかえっている。漫画やアニメのようなイラストが表紙絵に使われたり、強烈な個性を持ったキャラクターが登場したり。ライトノベルを読んで育った世代が、大人になっても読めるものをと、ライトノベルの作家や出版社が応えていることもある。加えてそんな“経験者”の外側から、面白い作品を読みたいという人が来て、読んでもらえる作品を書きたいという人も入って来て、いっそう市場がふくらんだのかもしれない。
すべてがライトノベルになる、とはさすがに言い過ぎとして、ライトノベルのエッセンスがじわじわと浸透し、拡散をしているのは事実。そんな時代に、元々からのライトノベルは何をすべきなのか? なんて問題も出て来そう。次代を見据えて要素を先鋭化させるべきだとか、波に乗って薄くても広く世界を覆う方向に進むべきだとか。
答えは簡単には出せそうにないけれど、ひとつだけ言えるのは、『このライトノベルがすごい!』大賞なんて大仰な(笑)名前が付けられたこの賞では、すごいこと、面白いことが何を置いても、絶対的に求められているということだ。大賞となった『ロゥド・オブ・デュラハン』なんて、冒頭から美少女が切り刻まれ、全編に死の匂いが漂う重たい作品。でも深い。そして強い。だから選ばれた。
『擬態少女は夢を見る』も、アニメーション作りに取り組む高校生たち、という設定が他にあまりなく、目新しかった。剣戟を突き詰めた作品に、最強とは寂しいことだと悟らせる作品など、単純過ぎたり、バランスが悪いところがある作品でも、目を引く部分があるならそれを伸ばせばすごさは増す。
ライトノベルかどうかを、気にしすぎて縮こまっては勿体ない。先鋭化を目指すなら極める覚悟を示し、広さを狙うなら圧倒的な物語の力を見せること。その心意気だけが、何でもありのこの時代に、突出して突破する力になるのだから。
工藤淳(「まんが王八王子店」小説担当)
昨年の総評で「ウケる要素を集めて書かれた小説は確かに面白いですが、繰り返し読まれ、残る作品にはなりにくい」と書きました。今回、最終選考に集まってきたのは今どきのテンプレ化されたライトノベルではなく、個性を持った作品たちでした。これからのライトノベルには自分の作品独自の世界観をもっていて欲しいと思っています。じゃないと、現在多くの読者が物語の展開やキャラクターを記号的に判別しているので、よく似た別作品に流れたり、取って代わられたりしてしまいます。独自の世界観をもつ今回の大賞作『ロゥド・オブ・デュラハン』は他に変わることができない、かつライトノベルとしても成立している良作です。現役のラノベ読者だけでなく、今どきのテンプレ化路線に飽きていてちょっと離れている読者や30代でファンタジー全盛の時代に小説を読んでいた読者などの幅広い層が買い、ニ度三度と読みたくなるような作品になると思います。今年は嬉しいことに最終選考に2作品もファンタジー作品が残りました。ですがもっともっとファンタジー作品を読みたいです。ファンタジー世界とはすなわち作者独自の世界観。読者が納得できさえすればどんな無茶でもとおります。作者が神なのですから。だからあなたの書いたおもしろい世界の物語をもっともっと読ませて下さい。川崎拓己(「コミックとらのあな千葉店」店長)
昨年に続き『このライトノベルがすごい!』大賞の選考に参加させて頂き、選考に残った作品を読ませて頂いた上で感じた事があります。それは「ファンタジー小説の投稿がある!」という事。昨年度の当選考の総評に個人的に読みたいという事を記載していましたが、それを見てくれて方々がいたのではと勝手に興奮し、感謝をしています!さて、今回の最終選考ですが個人的には昨年度より非常に悩みました。残った6作品は、非常に多種多様な作品となっており、またレベルが高い。甲乙付け難いものの、選考委員の皆様と悩んだ末に出した結論(大賞)が『ロゥド・オブ・デュラハン』でした。
上記作品は、ストーリーが非常に練りこまれており、読み応えのあるダークファンタジーでした。学園ファンタジーの作品だけでは物足りなくなった皆さんは是非読んで下さい!
来年度の第4回『このライトノベルがすごい!』大賞の選考には、今回以上に多種多様な作品の応募があるのではと今から確信に近いものを感じています。皆さんの熱い想いを1つの作品として創り出し、コチラにぶつけて下さい!
編集部より
おかげさまで『このライトノベルがすごい!』大賞も第3回を無事に迎えることができました。今回もたくさんのご応募を頂きありがとうございます。レーベルを立ち上げた3年前と比較すると、移り変わりの早いこの業界で、当賞を取り巻く状況にも大なり小なりの変化がありましたが、応募者の皆様、当賞の運営に関わられた皆様、そして現在このサイトを見てくださっているあなたの変わらぬご支援のおかげで今回も無事に受賞作の発表を行うことができました。厚く御礼申し上げます。本年は大賞1作、栗山千明賞2作、優秀賞3作と、例年の受賞作に1作を加え、全6作品が受賞作となりました。いずれも個性的な作品ばかり。どんな形で皆様のお手元に届けることができるのか、今から楽しみです。
応募作全体の印象としては、また一段水準が上がったという印象で、うれしいことでありながら、選考をする側もそれに応えられるようにと、気を引き締めたところです。
既に、第4回『このライトノベルがすごい!』大賞の募集もスタートしております。毎年感じるのは、著者が伝えたいこと、描きたいことが明確な作品ほど、読むものに強い印象を与え、さらに、それがどうしたら読者に届くかということにまで気を配った作品が選考に残るということです。
皆さんのそれぞれの「すごい!」を突き詰めた作品を引き続きお待ちしております!